著書紹介『現場に役立つ日本語教育研究1 データに基づく文法シラバス』くろしお出版

    『現場に役立つ日本語教育研究1 データに基づく文法シラバス』くろしお出版が刊行されました。本講座の渡部倫子准教授が「第7章 教師から見た文法シラバス」を執筆しました。

     

    本書は、「文法シラバス」というものをどのように考えるべきかについて、多角的に検討した論文集である。

     

    本書の書名は『データに基づく文法シラバス』である。「文法シラバス」については本書の中でもいくつか定義が述べられているのでここでは割愛し、「データに基づく」という部分について、少し述べてみたい。

     

    これまでの日本語教育にはいくつかの文法シラバスが存在するが、その多くは、当時の日本語教育関係者の経験値(「勘」)によって定められたものと言えよう。そのこと自体が問題であるわけではない。シラバスに問題点があるとしても、時代的な制約などを考えれば当然の部分も多い。問題なのは、既存のシラバスを「金科玉条」のように考え、その実質的な改訂を拒んできたこれまでの日本語教育の体制にある。

     

    この点に関する詳しい議論は他所に譲るが、いずれにせよ、現在の文法シラバスにはさまざまな問題点が存在し、一種の制度疲労を起こしているのは明らかである。今、必要なのは、具体的なデータや方法論にもとづいて、「文法シラバス」とはどのようなものであるべきかを問い直す作業である。本書の「データに基づく」という名称には、編者および各執筆者のこうした思いが込められている。(庵功雄「まえがき」より)

     

    データに基づく文法シラバス